群像2022年9月号

【特集】松浦寿輝 高山羽根子 工藤庸子 石沢麻依 松永美穂 大川史織 庭田杏珠

毎年戦争について考えている9月号の、今年の特集は「戦争の記憶、現在」です。

戦争が勃発し、きな臭い予感が立ちこめていた災厄の時代の始まり。だれもがそれに気づかないふりをし、安逸と享楽に溺れていたあの頃―戦争の時代に文学は何ができるのか。(松浦寿輝「香港陥落――Side B」)

祖父の死をきっかけに台湾の葬儀に出ることになった私は、生者と死者のあわいを見つめ直す旅に出る。(高山羽根子「パレードのシステム」)

大江作品のリ・リーディングから導かれた、一九四五年の「敗戦」を「文学」によりそい思考する試み。(工藤庸子「文学ノート・大江健三郎 Ⅰ敗戦と小説について――大岡昇平×大江健三郎」)

破壊された痕跡が奥深く残るイェーナの街が戦争の記憶を呼び起こす。(石沢麻依「蝶と蝶捕り人の変奏するイメージ」)

空襲の記憶を言葉に、文学にとどめることはできなかったのだろうか。『空襲と文学』から戦後の立ち位置を模索する。(松永美穂「ゼーバルトと戦争の記憶」)

戦争、核実験、ミサイル、気候変動……。大日本帝国の統治下にあったマーシャル諸島。この島に堆積した幾層もの記憶が掘りかえされるとき、世界は核戦争に突入しているのだろうか。(大川史織「Tの家があるところ」)

広島に生まれた者の使命として、被爆者の「想い・記憶」を受け継ぎ伝えていきたい。「記憶の解凍」プロジェクトを軸に、平和教育の教育空間への探究をつづける著者が未来につなぐバトン。(庭田杏珠「「記憶の解凍」でつながる未来」)


【創作】川上弘美 長島有里枝 町田 康

庭に大きな桜の木があるユリアと杉生の家に、朝見と中野は新しい壺を見に行くことになった。(川上弘美「水でぬらすと甘い匂いがする」)

PBの死からしばらくして、玄関灯が消えた家に帰るようになると、睦は小さな疎外感を覚える。(長島有里枝「灯台と羽虫」)

兄と弟、どっちが可愛い? 帝位をめぐって再び争いが始まる。(町田 康「応神天皇」)


【芥川賞受賞記念エッセイ】高瀬隼子 【小特集】今村夏子 江南亜美子 辛島デイヴィッド 瀧井朝世 平松洋子

『おいしいごはんが食べられますように』で第167回芥川龍之介賞を受賞した高瀬隼子さんに、特別エッセイ「失われたおいしいごはん」をご寄稿いただきました。

本試連載を単行本化した今村夏子さんの『とんこつQ&A』刊行を記念して、小特集を組んでいます。今村さんのエッセイ「サクランボの家」と、江南亜美子さん、辛島デイヴィッドさん、瀧井朝世さん、平松洋子さんによる書評豪華4本立てです。


【刊行記念】藤原辰史×関口涼子 沼野恭子

関口涼子さんの『ベイルート961時間(とそれに伴う321皿)』の刊行を記念して小特集を組んでいます。食を通して新たな社会の姿を探る、藤原辰史さんとの対談「「食を書く」こと」。沼野恭子さんに、書評「光に満ちたベイルートをめぐる魂の住まうテキスト」をご寄稿いただいています。


【ノンフィクション】稲泉 連 【最終回】小川公代 星野 太

「サーカス」という共同体は、華やかな芸と人々の色濃い生活が同居する世界、いわば夢と現が混ざり合った場所だった――。かつて「サーカスの子供」だった著者が描く、失われた風景とその時代。(稲泉 連「ぼくらは大天幕を見ていた」)

小川公代さん「ケアする惑星」、星野 太さん「食客論」が最終回を迎えました。


もくじ

〈戦争の記憶、現在〉

〈創作〉

  • 香港陥落――Side B  松浦寿輝
  • パレードのシステム  高山羽根子  

〈新連載〉

  • 文学ノート・大江健三郎 Ⅰ 敗戦と小説について――大岡昇平×大江健三郎  工藤庸子

〈小特集ゼーバルト〉

  • 蝶と蝶捕り人の変奏するイメージ  石沢麻依
  • ゼーバルトと戦争の記憶  松永美穂

〈エッセイ〉

  • Tの家があるところ  大川史織

〈article〉

  • 「記憶の解凍」でつながる未来  庭田杏珠

〈創作〉

  • 水でぬらすと甘い匂いがする  川上弘美
  • 灯台と羽虫  長島有里枝
  • 応神天皇  町田 康

〈芥川賞受賞記念特別エッセイ〉

  • 失われたおいしいごはん  高瀬隼子

〈ノンフィクション〉

  • ぼくらは大天幕を見ていた  稲泉連

〈『とんこつQ&A』刊行記念小特集・今村夏子〉

〈エッセイ〉

  • サクランボの家  今村夏子

〈書評〉

  • わたしたちは「正常」なのか?  江南亜美子
  • ほんかつ自問自答  辛島デイヴィッド
  • 深読みで遊ぶ『とんこつQ&A』  瀧井朝世
  • ズレを回収する奇天烈なチャネリング  平松洋子

〈『ベイルート961時間(とそれに伴う321皿の料理)』刊行記念〉

〈対談〉

  • 「食を書く」こと  藤原辰史×関口涼子

〈書評〉

  • 光に満ちたベイルートをめぐる魂の住まうテキスト  沼野恭子

〈最終回〉

  • ケアする惑星  小川公代
  • 食客論  星野 太

    〈コラボ連載〉

    • SEEDS 現代新書のタネ〔8〕「危険思想」としての精神分析  工藤顕太

    〈連載〉

    • の、すべて〔8〕  古川日出男
    • 新「古事記」 an impossible story〔11〕  村田喜代子
    • 見えない道標〔15〕  若松英輔
    • 鉄の胡蝶は記憶の歳月の夢に彫るか〔49〕  保坂和志
    • 二月のつぎに七月が〔43〕  堀江敏幸
    • 庭の話〔3〕  宇野常寛
    • 事務に狂う人々〔4〕  阿部公彦
    • 撮るあなたを撮るわたしを〔5〕  大山 顕
    • 世界の適切な保存〔5〕  永井玲衣
    • なめらかな人〔6〕  百瀬 文
    • 文学のエコロジー〔7〕  山本貴光
    • 磯崎新論〔9〕  田中 純
    • 講談放浪記〔9〕  神田伯山
    • 地図とその分身たち〔11〕  東辻賢治郎
    • 世界と私のAtoZ〔13〕  竹田ダニエル
    • 言葉の展望台〔17〕  三木那由他
    • こんな日もある 競馬徒然草〔19〕  古井由吉
    • 旋回する人類学〔19〕  松村圭一郎
    • 現代短歌ノート二冊目〔24〕  穂村 弘
    • 日日是目分量〔25〕  くどうれいん
    • Nの廻廊〔16〕  保阪正康
    • 「近過去」としての平成〔30〕  武田砂鉄
    • 星占い的思考〔30〕  石井ゆかり
    • 所有について〔17〕  鷲田清一
    • 辺境図書館〔30〕  皆川博子
    • 〈世界史〉の哲学〔143〕  大澤真幸
    • 文芸文庫の風景〔21〕  津田周平
    • 極私的雑誌デザイン考〔28〕  川名 潤

      〈随筆〉

      • 小さな部屋についての思索  小澤京子
      • にんじんの味  工藤祐次郎
      • またあした  島 楓果
      • ぶるぶる  中川朝子
      • 奇跡のフルコンボ  松本時代
      • 演劇と数の問題について  山本卓卓

      〈書評〉

      • 『信仰』村田沙耶香  佐藤 究
      • 『両手にトカレフ』ブレイディみかこ  三宅香帆